月明かり

(どうしてこんな風景が好きなんだろう‥‥。)

(ん?)

(少し淋しいような気がしてな。)

(私には綺麗に見えるだけだけど、そう思うのならそうなのかもしれないね。)

(おまえ、ノリがいいな。)

(え。なんとなく、そう言って欲しいのかなって思ってね。)

(見透かされてるな、お前には。)

(うん、だいたいのことはわかってるつもりだよ。)

(月明かり。この何ともいえない感覚はなんなんだろうなぁ?)

(そうだよね。暖かい感じがするよね、この光。)

(月の無い夜より、月のある夜がすごく好きだな‥‥。)

(暗くなってもね、月は夜を照らしてくれるんだよ。)

(暗い夜を照らして見守ってくれてるんだよ。)

(ずっと見守ってくれたらいいのにどうして沈んじゃうんだろううな。)

(今日はもう暗くなっちゃったけど、また明日があるんだよ。)

(明日?)

(そう、明日。また明るい明日を生きるために今日の夜を見守ってくれてるんだよ。)

(明日‥‥。明日は何かあるのかな。おもしろいことがあるのかな。)

(うん、明日はきっと、今日よりもおもしろいはずだよ。)

(ああ。そうだといいが。)

(月の光が水面に映ってきれいだね。)

(そうだな‥‥光が暖かい。でも少し淋しいな。)

(そう思うんなら今度、誰かと一緒に見に来ようよ。私以外の誰かとね。)

(でもな、俺はお前と話している方が楽しいんだけどな。)

(そんなはず無いよ。)

(思いっきり否定するなぁ。)

(でも、あなたの世界にはもっともっと楽しいこといっぱいあると思うよ。)

(そうかな。)

(そうだよ。今は月夜だけど、朝は必ず来るんだよ。)


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